2023-12-04

ムサビ通信 学生インタビュー〜学生と仕事との両立、描く将来像について〜

吉祥寺校

武蔵野美術大学に通っていても、通信教育課程(ムサビ通信)の学生との関わりは、実はほとんどありません。そこで、mauleafを通じてムサビ通信の学生さんにインタビューをする機会をいただきました。お話を伺うと、ムサビ通信の学生さんの中には仕事と両立しながら新たな夢を持っている人もいました。また、幅広い年齢層や経歴の方が通っていることから自分たちの今後について深く語り合ったり、人生について何か考えるきっかけを与えてくれるような方との出会いもあったり……。そんなムサビ通信の学生さんお2人に、学生と社会人の両立や作品作り、将来像などについてお聞きしました。

<お話を伺った武蔵野美術大学通信教育課程在学中のお2人>
デザイン情報学科 デザインシステムコース4年 鈴木 祐太さん
デザイン情報学科 コミュニケーションデザインコース4年 伊藤 茉莉さん

ムサビ通信での出会い

—ムサビ通信では様々な経歴の方と出会うと思いますが、その中で刺激を受けた学生はいましたか?その方とのエピソードもあれば、教えてください。

鈴木 祐太さん(以下、「鈴木」):ムサビ通信は年齢問わず色々な人がいて、その中でも刺激を受けた人は2人います。1人は元々、情報分析に特化したデータアナリストという仕事をされていた方です。僕はプログラミングを全くやったことがなく、情報分析すらよく分かっていなかったのですが、マルチメディア表現のグループワークでその方と同じ班になり、自分もデータの可視化などができるようになりたいと思うようになりました。それをきっかけにプログラミング言語(Python)を勉強するようになり、その結果、時計メーカーのデータ分析職に転職することができたんです。現在の仕事とは違いますが、自分がやりたいこととデータ分析で学んだことはつながっていると思っています。もう1人も何度か授業で一緒になったことがある方で、授業で求められていることを察知する洞察力が物凄いなと個人的に思っています。

伊藤 茉莉さん(以下、伊藤):私は幅広い年代の方それぞれから刺激を受けました。例えば、高校を卒業してムサビ通信に入り、海外に行ってやりたいことがあるという人がいました。そういう話を聞くと、とても情熱に溢れていて自分にとっての気づきになります。鈴木さんも同世代として刺激を受けた人の1人です。ムサビ通信で勉強したことを活かして転職したのを目の当たりにして、そういう道もあるのだなと学びました。実際に夢を実現している人がいるということが励みになっています。
同世代や年上の同級生とお酒を飲みながら、今後のことについて語ってお互い励まし合ったりもします。学生時代にお酒を飲みながら語るということがなかったので、そういう話ができる人と出会えたのはとても良かったです。また、定年退職した人や、展示会など好きなことをやっている人もいて、自分もどんな人生を過ごしたいのかなどを考えるきっかけを与えてもらっています。

吉祥寺校でのスクーリング

人とのつながりと作品

—伊藤さんは現在、学生であることと、仕事や将来の夢などを両立していますか?

伊藤:私は学生と外資系化粧品メーカーでの購買の仕事を両立しています。今後の自分の目指す姿としては、人と人とがつながる場作りをしていきたいです。それを仕事の中でも実現するために、取引先にコミュニティとしての一体感を感じてもらうイベント企画を担当したり、社内向け説明会を楽しくわかりやすくして開催したりしています。

—伊藤さんは作家としてステンドグラスを制作されていますが、どのようなきっかけで始めたのでしょうか?

伊藤:きっかけは鷹の台キャンパスのスクーリングで受講した「絵画研究I」という授業でした。それまでステンドグラスは古典的な教会のイメージが強かったのですが、モダンなものや、自分の好きなデザインで作れるという気づきがありました。またガラスは背景が変わると色が違って見えたり、光の当たり方や時間帯などによって映る影が違うことがあります。ガラスの表面のテクスチャーも様々で、予想できない組み合わせがたくさんあり、いつ見ても綺麗だなという発見があります。

「絵画研究I」で制作した伊藤さんの作品

—会社員をしながらどのように時間をやりくりして制作をしていますか?

伊藤:私の場合は毎日仕事が終わったらやるというタイプではなくて、仕事が大変な時は仕事を夜までやりますし、気が向いた時に制作するという感じでやっています。例えば、展示会があればその前までやることを決めてマニュアルを作ったり、オーダーメイドの注文を頂いたら納品期日に間に合うように計画を立てて作ります。結構、柔軟に自分で予定を立てられているかと思います。

—ステンドグラスの制作は、将来的にやりたいこととどのようにつながっていきそうでしょうか。

伊藤:今年の4月に初めての展示会を開きましたが、たくさんの人が集まってくれました。ムサビ通信の同級生や前の会社の上司、今の会社の上司などがそこで会う瞬間があったり、初めてお会いした方からオーダーメイド作品の発注をいただいたりと、人と人とのつながりを生み出せた展示会でした。そこで思ったことは、展示会というのは一つの手段なんだということです。自分の手で作ることと、人と人をつなげるということを両立できるのではないかと感じました。

—仕事や作家活動など、伊藤さんの今後の展望を教えてください。

伊藤:私はムサビ通信で学んだことを活かして、仕事の幅を今よりも広げたいと思っています。社会人になった時は日本の経済を支えたいという気持ちからセメント工場などに勤務し、ものづくりの根幹を担いたいと考えていました。それが海外の大学への留学や転勤などをするうちに、物質的な幸せに限界を感じ、モノが溢れている市場や、モノをたくさん作り続けることの意味を自分に問いかけてみました。その中で、自分が作った作品が人と人とがつながるきっかけになったり、誰かの気づきになったりすることの豊かさを、さらに追求したいと思うようになりました。ただ、今までのキャリアとこれからやりたいことのギャップがあるので、それをどうやって縮められるか。会社の中で、より自分のやりたいことに重なる範囲を探してみる、あるいは違う形で何かできないかなど、色々な選択肢を考えながら模索している段階です。

学び×専門分野でアートを

—鈴木さんは学生をしながら転職活動をされていましたが、現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

鈴木:ムサビ通信で学んだことは、自分が挑戦したいと思っている「サスティナビリティ領域」でのキャリアアップに繋がりました。現在は、その中の興味分野である「地球温暖化・生物多様性」に関わる業務に携わっています。

—学生であることと仕事との両立や、学んだことと将来の夢とのバランスはどのように取っていますか?

鈴木:将来の夢については、社会に出る前に考えていたことと今では全然違うことをやっていますね。当時は音楽に特化したテレビ局でインターンを経験し、音楽系に進みたいと思っていました。でも、今は環境問題に関する取り組みについて考えていく仕事をしています。社会人であることと学生であることについては、実際に環境系の仕事をやりたいなと思った時に、ムサビ通信で学んだデータ分析などと組み合わせてみたら結構しっくりきたので、転職活動を進めたように、学びからの影響は大きいです。そして、結果的に今の仕事につながっているという部分もあるので、自分のやりたいこととやらなければいけないことの両立はできていると思っています。

—ムサビ通信で学んでいることを今後、どのように活かしていきたいですか?

鈴木:僕は今やっている仕事がやりたいことなので、これからムサビ通信で学んだ知識を活かしてアートの作品作りをしたいと考えています。作品を作るにあたり知識が必要だということを、ムサビ通信に入ってから学んだので、自分の興味のある分野について理解を深めて、それをアウトプットできたら面白いなと思っています。環境や生物の多様性という、今の仕事での専門分野をメインに、色々な知識と合わせて何か形になるものを作りたいと思っています。
今は転職したばかりで卒業制作の準備もありますが、ムサビ通信で学んだことを絶やさず、さらにデータサイエンス領域についても理解を深めていきたいです。

鈴木さんの作品「学歴格差の3次元データによる可視化」
鈴木さんの作品「鉱物資源データを用いた結晶構造の可視化」(映像作品)


編集・執筆・取材:クリエイティブイノベーション学科1年 藤松 采

関連記事